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憧れていた高校の先生との体験談 3

殺風景な駐車場で一人ポツンと立っていると、しばらくしてM先生の車が戻ってきた。


「ごめんね。あのまま駐車場にいると変に思われそうだったから一旦外に出ちゃったよ。置いていかれたと思った?」
「いや、さすがにそれは無いと思ったけど・・・びっくりした」
「ごめん、ごめんww」

戻ってきたM先生はさっきの様子とは打って変わって、上機嫌でコロコロ笑っている。
俺が駐車場で一人ポカンとしているところを想像したら可笑しくなっちゃったらしい。

そう、M先生って意外とこんな風に笑う人なんだよな。
俺は今更ながらM先生との色々なやり取りを思い出しながら、ちょっと気持ちが解れた。

M先生は俺のそんな気持ちの変化を気にする素振りも無く、
「ここにいるとまた誰か来たら置いてきぼりになっちゃうね。ね、お家が大丈夫だったらこれから一緒にご飯でも食べに行こうか?進学のお祝いしてあげるよ」
とごく自然な感じで俺を誘ってくれた。


まさかM先生の方から食事に誘ってくれるという意外な展開。
この流れも俺の事前シミュレーションには全く無かった。
というか良い意味で想定外すぎる。




俺は二つ返事でOKし、M先生の車に乗り込ませてもらった。
「校門出るまでは隠れててよww」
何となくこの状況を楽しんでいるような表情で笑うM先生が可愛いっ!!
それに車の中は何とも言えないいい匂いに包まれていて、まるで夢の様な気分。

俺は助手席で身体を小さく丸めながら、この展開が現実なのかと頬をつねりたい気分だったけど、そんな心配をするまでも無く、それは俺が想像することすら出来なかった夢の様な現実だった。


「あー、ドキドキしたねーww」
校門を出るとM先生が話しかけてくる。
しかも昨日までの会話とは微妙に口調が違っている気がする。
言葉に親近感があるというか、親しみが込められているというか・・・

(・・・・もしかしてこれはデートというものなのか?)
成り行きとはいえ生涯初のデートを思いもよらずM先生と出来るなんて、こんな幸せなことがあっていいんだろうか・・・俺はしみじみと幸せを噛み締めた。


それからの数時間は正に夢心地だった。
地元では知り合いに会うかもしれないということで、俺たちは少し離れた場所にあるショッピングモールまでドライブし、その中のステーキハウスで夕食を食べた。

正直、俺は緊張と興奮で味はよく分からなかったけど、この1年間のトータルよりもはるかに多い量の会話をM先生と交わすことができた。

俺は、M先生がよく笑う、思っていたよりもずっと気さくな人だって知って改めて魅力に取り付かれてしまったんだけど、M先生はM先生で「A君って意外とよく喋るんだね。そんな風に明るくしてたらもうちょっと女の子にモテたかもよぉw」なんて褒めてるような嫌味のようなことを言って俺のことを馬鹿にした。

でも楽しい時間ってほんとあっという間に過ぎてしまう。
食事を終え、8時を過ぎたぐらいになると、M先生が「そろそろ帰らないとね」と言い、俺たちは店を出た。

「えーっと駅は□□駅でいい?送ってくね」
とM先生が駐車場で言う。

でも俺はこの夢の様な時間が終わるのが嫌で返事ができない。
それに駅で別れるといっても、それは今までのように「また明日」っていうような別れとは違い、地元を離れる俺からすると、下手をしたらこれがM先生との最後の別れになるかもしれないわけで、そう考えると俺はとてもじゃないけど返事が出来なかった。
俺はこの時も何といって良いか悩み、無言で立ちすくんでしまった。


「どうしたの?」
訝しむようにM先生が尋ねた時、俺は意を決した。
見えないか何かが背中を押してくれたような感覚。
多分それは俺がM先生のことを心底好きだという気持ちそのものだったんだと思う。

この何時間M先生と話しをして、俺はもちろんだけどM先生にしても少なくとも俺に対して好意を持ってくれているというのは分かった。
例えそれが恋愛という感情ではないにせよ、M先生が俺を食事に誘ってくれて、この時だけは二人だけの時間を過ごしてくれたことは紛れもない事実。
俺はここで勇気を出さずに一体いつ出すんだという思いで口を開いた。

「・・・ねぇ先生。俺、まだ帰りたくないです・・・」
「えっ!?」
M先生が驚いたような顔で俺を見つめる。

「・・・まだ帰りたくないです」
「・・・でも、そんなこと言ったってどうするのよw?家の人だって心配するし、時間が時間だから私だってもうこれ以上A君のこと連れ回せないよ」

「家は大丈夫。ただ俺もうちょっと先生と一緒にいたい。それに今ここで別れたらもう二度と先生に会えなくなるかも知れないし・・・」
「もう、大袈裟だなぁ。大丈夫、また会えるよ。A君また会いに来てくれればいいじゃないw」 

「・・・・・・」
「ね、だから行こう」

そう言ってM先生が俺を促す。
俺はどうしても足が動かない。

「・・・ねっ、行こ」
業を煮やしたのか、M先生が俺の手を取り引っ張ろうとした時、再び俺の中で何かが破裂した。


「・・・先生」
「ん?」
「・・・先生、俺、先生とキスしたい・・・」
ついに言ってしまった。

「俺、今まで誰とも付き合ったこと無いし、キスだってしたことない。だからって言うのも変だけど、俺先生に最初の相手になって欲しい・・・」
「・・・・・・」
「・・・駄目?」

M先生が明らかに戸惑っているのが分かる。
なんと答えて良いかを考えている様子。
だだっ広い駐車場を風が吹き付ける中で沈黙が続いた。

「・・・ごめんね。でもいきなりそんなこと言われても、教師としてはそういうことはできないよ・・・」
しばらくしてM先生が口を開く。

「俺、もう生徒じゃないです・・・」
「それはそうだけど・・・。でもやっぱりそれは無理。・・・ごめんね・・・」

M先生の困った顔。
そんな顔も魅力的ではあるけど、やっぱり現実は甘く無い。

「そっか、やっぱり無理だよね・・・」
「ごめんね。でも、そういう風に言ってくれるのは嬉しいよ。ありがと」

そう言うと、M先生は微かに笑い、「キスは無理だけど、握手」と言って俺の目の前に右手を差し出した。

「ね、握手しよ」
M先生はもう一度言うと、失意と緊張で固まっている俺の手を取るとギュッと力を込めた。


M先生の細くてしなやかな指の感触と手の温もりが伝わってくる。
俺はM先生を見つめた。
M先生も真正面から俺のことを見ている。
俺が1年間見つめ続けてきたM先生が目の前にいる。
やっぱり堪らなく愛しい・・・

俺はもう駄目だった。
雰囲気に飲まれ、完全にM先生に酔っていた・・・


俺は力づくでM先生の手を引っ張ると、有無を言わせず抱きしめてしまった。

「きゃっ!」
小さな悲鳴を上げるM先生。

「先生ごめん。でも俺止まらなくて・・・」

そのままの状態で言い訳をする俺。
あごの辺りにM先生のやわらかい髪の毛の感触。
細い肩と大人の女性特有の甘い香り。
M先生は無理に抵抗すること無く俺に身を預けたままでいる。
頭の中が真っ白になる。

「・・・先生、俺先生のこと好きです。付き合ってくれなんて大それたことは言えないけど、今日だけでいいんで、今日だけ俺と付き合ってくれませんか・・・」

気持ちの異常な昂ぶりにもかかわらず、俺は自分でも驚くほど冷静に、そして思いっきり大胆な本音を口にした。


「・・・付き合うって?」
俺の胸の中でM先生が小さく尋ねる。

「・・・今日だけ、付き合うって・・・どういうこと?」
「・・・だから今日だけでいいんで、俺とずっと一緒にいて欲しいってことです・・・」
俺はひるみそうになる気持ちを抑えて必死に答えた。

M先生は俺の胸に両手を添えると、俺の体を押すようにしてゆっくりと俺から離れた。

「・・・A君、それ本気で言ってるの?」
「・・・うん・・・」

至近距離から俺を見つめるM先生に、声を絞り出すように返事をする俺。
少しの沈黙。

「A君、そんなこと簡単に言うけど、それってすごく大変なことだよ・・・ほんとに本気で言ってるの?」
「本気も何も、俺はM先生が好きですから!」

吹っ切れたように俺がそう言葉に力を込めると、M先生は困ったような表情を浮かべうつむいた。
髪の毛がパサリと落ちてM先生の顔を隠す。

俺は俺でもうこれ以上何か言うのは気が引けるような気もしたし、何よりもこれ以上は体に力が入らない。
立っているだけで精一杯。なんか一瞬で自分の全精力を使い切った気がした。


居心地の悪い時間が随分と長く感じられた後、M先生がようやく口を開いた。

「・・・ねぇ、A君?」
「・・・はい」
「・・・困ったね・・・」
「・・・・・・」

俺がM先生の真意が分からず黙っていると、M先生はかすかに笑うと「ちょっと、ここで待ってて」
と言い残し、建物のほうへ歩いていった。

駐車場に立ち尽くす俺。
M先生の真意は分からないけど、ただ俺にはもう退路が無いことだけは間違いなかった。
言うことを言ってしまった以上、後はM先生の判決を聞くだけ。
俺は脱力感と共に、一種の清々しい気持ちさえ覚えながらM先生の戻りを待った。


M先生は数分で戻ってきた。
その顔にはほとんど表情がなく、見ようによっては怒っているようにも見えた。

「あー、やっぱり怒ってるのかな・・・」
急に不安になった俺に対して、M先生はいつものように正面から真っ直ぐに俺の目を見つめると、少し息を吸い込み

「本当にお家は大丈夫なの?もし家に帰らないつもりだったら、お家の人が心配しないように連絡だけはちゃんとしておかないといけないよ。最低限それだけはお願い」
と小さく俺に命じた。

<続く>

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学校・幼稚園 | 【2015-07-12(Sun) 22:10:40】 | Trackback:(0) | Comments:(0) | [編集]
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