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僕の長い初恋 2【体験談】

みどり子姉ちゃんが実家に戻ってきてから、僕等はよく顔を合わせるようになった。

出勤前に玄関先を掃除する姿をみたりしたし、何かと心配した母が食事に姉ちゃんを呼んだりしたからだ。2人とも最初は余り話をしなかったけど、少しずつ日常会話から段々と昔のように話すようになっていった。

「昔はこうしてユウ君となんでもお話したよね」

「うん・・」

「あの頃は良かったね・・毎日が楽しくて・・・幸せで・・」

そういう姉ちゃんの目は凄く寂しそうだった。

優しいタレ目だったはずがいまは凄く悲しいタレ目に見えてしまう・・ 忘れてたと思ってた気持ちがずきずきとうずくのを感じた。

「あの頃に戻りたい・・」

みどり子姉ちゃんはどこか吐き出すようにポツリと言った。

その時の姉ちゃんの顔を僕は今でも鮮明に覚えている。どこか、明日には・・いやちょっと目を離したら今直ぐにでも居なくなってしまうんじゃないかというような影があった。

僕はソレが凄く引っかかって、ソレから毎日姉ちゃんの顔をみて暫く話をするのが日課になった。

そんなある日だった。




姉ちゃんが手首を切った・・ 家に帰ると丁度家の前で救急車が走り去る所だった。

僕はソレを見た瞬間もしやと思い、丁度心配そうに救急車を送りだした母と目があった瞬間に全てを理解した。

玄関先に止めてた自転車の鍵を外し、何か言ってる母の言葉も聴かずに救急車が走った方向へ追いかけた。

この辺で大きな病院といえば一つしかない。僕はあの日よりももっと必死に、自転車が壊れるような勢いで走った。

仕事でクタクタでカバンすら重いと思ってたのが嘘みたいだった。

病院につき自動ドアが開いた所で足がガクガク震えてきた。

それは病院の奥へ行くに連れて大きくなっていった。

受付で事情を話すと直ぐに奥に案内してもらえた。

救急車で一緒に乗ってきたのだろうみどり姉ちゃんのお母さんが顔面蒼白で座っていた。

「お母さん!」

「ゆうちゃん!・・みどりが!みどりが!!」

緊張の糸が切れたのかお母さんは僕のシャツにすがるように泣き崩れた。

「姉ちゃんは!みどり姉ちゃんは?!」

「まだ解らないって・・発見は早かったから・・でも・・・」

それからの数時間は本当に長かった。

そしてもう二度と経験したくない数時間だった。

明日太陽が無くなったら? もし永遠に昼がこなくて寒い夜のままだったら・・ どうやって僕らは暖かい気持ちになる?・・寒い・・寒い・・・死ぬよりも寒い・・・ 幸いにも自殺未遂だった。

お母さんが何時もより1時間半も早くパートを切り上げて帰ってこなければ 、冷たくなった姉ちゃんを風呂場で見つけたはずだと医者にはいわれた。

後々聞いたがやはりお母さんはここ数日のみどり姉ちゃんの様子が変だと思ってたらしく、出掛けの会話が妙に引っかかって仕事していられなかったらしい。僕は今でもこのお母さんの勘に心から感謝している。薬で眠っている姉ちゃんは本当に死んだ人のようだった。

今すぐにでも側にいって手を強く握り締めて、本当に生きているのか確かめたい衝動に駆られた。

そして凄く凄く・・僕は初めて姉ちゃんに心から腹が立った。

元気だったらしこたまひっぱたいてやりたいと思った。

生きててくれてよかった。

よかった。

僕は暫く仕事を休んだ。とても忙しくまずい時だったが、直接の上司に事情を説明して解って貰った。

その人は、職場で一番怖い人だが、仕事ができ頼れる人だ。何よりも仕事優先・・そんな人だと思っていたが、休みたいという僕に理由を聞かずにあっさりとOKをくれた。

「お前がそんな顔で休みたいというにはそれなりの理由があるんだろう?」

鋭い眼光だった。

大抵の1年生はびびるし下手すると男でも泣きが入る。

「はい!勿論です!」

「じゃあ行ってこい、お前の分は俺がやっとくから」

「その代わり帰ってきたら今までのようにはいかねぇえぞ」

「わかりました!ありがとうございます!!」

職場に響くように大声でいい、後ろをむいて職場皆にむかって頭をさげた。

仕事を休んだ僕は、毎日みどり姉ちゃんに会いに行き、出来る限り長く彼女の側にいた。

何も話さない糸の切れた操り人形みたいな姉ちゃんのそばで、僕は何も言わずにただ手を握っていた。

「ごめんね・・ユウ君・・仕事休んでまで・・心配かけて・・」

ある時ふと姉ちゃんが外を見ながら言う。

「馬鹿・・謝るくらいなら最初からこんな事するなよな・・」

「本当だね・・なんであんな事したんだろう・・・」

姉ちゃんの手をギュッと握る。

「大きくなったんだね・・」

姉ちゃんがその手に目をやる。

「なにが?」

「ユウ君の手・・いつの間にか男の人の手だね・・」

「ずっと可愛いユウ君だとおもってた・・」

「姉ちゃん約束してくれよ・・もう二度とこんな事しないって・・」

「うん・・・・お母さんにもお父さんにもそういわれた・・ユウ君のお母さんにも・・・看護婦さんにも・・先生にも皆に怒られた・・・私こんなに怒られたの初めてだよ・・・ふふw」

「わ、わらいごとじゃねぇえ!!」

思わず病院だという事を忘れて大声でどなって立ち上がった。

がたっと椅子が音をたて、患者さんが何事だと部屋をのぞく。

「俺がどれだけ心配したと思ってるんだ!」

「俺は姉ちゃんがもう居なくなると思ったんだぞ!!」

「その時の俺の気持ちが姉ちゃん少しでもわかるのか?!」

直ぐに看護婦さんが駆けつけてくる。

「どうしました?!」

「いや・・すみません・・」

「院内ではお静かにお願いします。

他の患者さんもいらっしゃいましから」

「はい・・・」

看護婦さんに謝って椅子に座りなおす。

「・・・・・・」

暫く沈黙が続く。

「私ね・・赤ちゃんできないって・・言われたの・・要らないって・・言われたの・・」

また呟くように姉ちゃんが喋りだした。

「?」

「あの人・・としあきさん(旦那)とね頑張ったんだけどね・・中々赤ちゃんできなくて・・それで色々試したんだけどね・・上手く行かなくて・・」

「段々お互い疲れちゃって・・」

「それでね・・としあきさん他に女の人居るみたいで赤ちゃんできたって・・・・それでお母さん(旦那側の母)がお金あげるから 離・・しなさい・・」

最後はもう嗚咽で聞こえないくらい言葉が小さく潰れてしまっていた。

後々みどり姉ちゃんのお母さん聞いた話しだが、そもそもお母さんが妊娠し難い体質だったようだ。その性質を姉ちゃんは強く引きついでしまったようで、相性の問題もあるらしいが子宝に恵まれなかったようだ。

そこへきて旦那が過ちで女性を妊娠させてしまい、ソレを知った姑がコレ幸いとそっちを本妻にしなさいと言い出し、お坊ちゃまで真面目な旦那も段々と親戚一同に説得され責任取らねばとなったようだ。 そして離婚・・・

子供の産めない嫁として立場の無くなったみどり姉ちゃんは、お金を押し付けられるようにして家を追い出されたようだ。只でさえ子供ができない事で落ち込み引け目を感じていた姉ちゃんは、コレで完全に参ってしまった。

いつも一生懸命で何事も真面目なみどり姉ちゃんにしてみれば、コレは極めて厳しい事だった。

何時までも泣く姉ちゃんを僕はずっと抱きしめている事しか出来なかった。

ソレから数日して姉ちゃんは退院できる程度に回復して自宅にもどった。

もう馬鹿な事はしないと本人は言っていたが、それでも心配なので、うちの母とお母さんが交代で見張るようになった。

僕も仕事に戻ったが休みは勿論、昼も出来るだけ姉ちゃんにメールを送った。

できるだけ関係ない、日ごろの事を書いたメール。昼は何を食べたとか、休みは何をするとかそんなやり取りだ。勿論仕事が終わって休みの日はずっと一緒だ。何かと理由をつけて姉ちゃんを連れまわすことが増えた。

姉ちゃんはまだ何処か寂しそうな顔だったけど、僕が面白そうな事を言えば面白そうに笑顔を作る程度には元気だった。

「ユウ君も私のせいでこんなに迷惑かけてごめんね・・彼女とか嫌がるでしょ?」

ある時姉ちゃんが言う。

「俺彼女居ないよ」

「でも・・・」

「居ないよっていうかいた事無いよ俺」

「嘘・・私に気を使ってくれなくて良いよ・・」

あからさまにうそ臭いと思ったのか不機嫌になる姉ちゃん。

「嘘じゃないよ」

「だってユウ君結構モテタじゃない、バレンタインデーだって結構毎年・・」

「どれだけモテるとかってそんなに大事?」

僕はいい加減何だかいい様のない、長年ためてきたストレスのような物を感じた。

「例え100人に好かれたってたった一人好きになってほしい人に振り向かれなきゃそんなのいみなくね?」

「・・・・・・・」

勢いで言って「しまった!」と思った・・・

旦那と離婚した今の姉ちゃんにはキツイと思ったからだ。

「ごめん・・・」

謝る僕

「ううん・・そうだね・・ユウ君の言うとおりだね・・良く解るよ・・私こそごめん・・」

「ふふ・・2人とも片思いだね・・・」

2 人 とも 片 思 い  その台詞を聞いて、まだ旦那への気持ちがあるんだなと感じる・・

「姉ちゃん・・」

「なに?」

「俺はあきらめてねーぜ・・片思いだ何て諦めてない・・」

「そっか・・」

姉ちゃんは少し寂しそうにそういう。

「わかってねーな」

「え?」

そういうと僕は姉ちゃんを両手で抱きしめる。

「ちょwユウ君なに?w」

姉ちゃんの軽いからだが少し浮く。

「俺絶対姉ちゃんを俺の嫁さんにするからな」

「は・・え?」

「姉ちゃんはわかってないかもしれないけど、姉ちゃんが大学行く時すげぇつらかった!」

「毎日幸せだったのに姉ちゃん居なくなって死ぬほどつらかった!」

「俺が嫁さんにするつもりだったのに姉ちゃん結婚して俺は本当に悔しかった!!!」

「俺はずっとずっと!姉ちゃんが好きだった!」

「ちょ!ユウ君こんな所でなにいってんの・・・」

姉ちゃんがキョロキョロする。

「姉ちゃん!!」

「!!!」

急に至近距離で怒鳴られてビックリして目をぱちくりする姉ちゃん。

「死ぬくらいなら俺の嫁になれ!!」

「子供なんか要らない!いや、俺が絶対孕ます!!!」

「俺は姉ちゃんじゃなきゃ絶対結婚しない!俺の母ちゃんにも迷惑かけたんだから、俺と結婚して老後の面倒一緒にみてくれ!!」

我ながら凄いめちゃくちゃ言ったと思う。結局その時は答えはもらえなかった。でも、僕は言いたかった。

子供が作れない事は勿論、単純な歳の差・・・今まで姉弟のように過ごした時間、行きなり僕を男としてみて欲しいなんて無理だとわかっていた。

それでも・・僕はもういやだと思った。

あんな思いもこんな事も全部もう二度とごめんだと。僕が一番好きな人は世界で一番幸せでなくちゃダメだ。姉ちゃんを無理やりにでも僕のものにして、僕の手元で世界一幸せになってほしいと、狂おしいほどに思っている。僕はそう最後に言ったと思う。そうやって勢いで告白してからも、休みの日や仕事が終わった後は2人で過ごした。

どっちからというわけでもなく、昔のように2人でTVをみたりして過ごす。

両親もそんな僕を見てもう解ってるようだった。

ある日母が僕に言った。

「ユウ、アンタが選んだ人なら私は誰でも良いからね」

僕は無言で頷いて自分の部屋で泣いた。

僕はその言葉をその夜姉ちゃんに話した。

姉ちゃんはボロボロないて「本当に私で良いの?わたしなんかでいいの?・・」

と繰り返した。

その日初めて女性を抱いた。

何も解らない僕を昔のように・・優しく抱いてくれた。

本当に、指も胸も首筋も白い肌も唇も髪も耳も何もかも全てが夢以上だった。

何度も果てた、僕は何度でもできた。初めて彼女の中に入って抜くまで何度果てたのか解らない。そんな僕に彼女は応じてくれた。

「みどり子・・・愛してる。ずっと愛してた。ずっとこうしたいと思ってた。」

強くなりたかった。早く大人になりたかった・・ 遠すぎる君をやっとこうして側に感じることが出来る。

「ユウくん・・・ありがとう・・愛してくれてありがとう・・・」

「ずっと側に居てくれる?」

「ああ」

「ずっと愛してくれるの?」

「もちろん」

君が居ない辛さは僕はもう十分に知っているから。

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